第3回 国際マンガ・アニメ祭 Reiwa Toshima (IMART2022)開催レポート

 

10月21日(3日目)

 

いま新潟がマンガ・アニメで熱い!――地域におけるマンガアニメの拡がりを生むには――

10:30-11:30  配信A会場 
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本セッションでは近年盛り上がりを見せる新潟のマンガ・アニメシーンに迫った。内田氏によれば、新潟は全国有数のクリエイター輩出地であり、1983年から同人誌即売会・ガタケットを開催、2000年に日本アニメ・マンガ専門学校を開校するなど、物作りの環境が整っており、2012年には「新潟市マンガ・アニメを活用したまちづくり構想」を立ち上げ、産官学が連携してマンガ・アニメ産業を支援してきた実績を持つという。
問題はそういった取り組みが新潟以外の人たちには伝わっていないことだ。そうした現状を打破するため、2023年3月には「新潟国際アニメーション映画祭」の開催が決定した。梨本氏は映画祭を50年続けて「ジャンルを問わず、長編アニメーションに特化したアジア最大の祭典を目指す」と目標を掲げる。さらに東映の初代社長である大川博や、東映動画(現・東映アニメーション)の設立に参加した蕗谷虹児が新潟出身であることに触れながら、「東映動画のような会社を作り出す人が新潟から出てほしい」と意気込みを見せた。

 

本セッションでは官民さまざまな立場からマンガ・アニメの展覧会の運営に携わる登壇者を迎えて、その取り組みを振り返った。吉村氏は2007年に開館した国立新美術館が、アートとして扱われる機会の少なかったデザイン・ファッション・建築などのジャンルに力を注いでいることを紹介。マンガ・アニメに関しては、2015年の「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム」から2021年の「庵野秀明展」まで、多彩な企画展を開催してきた実績を持つ。
もとは複製画などを販売していたキャラアートは、作家からの「原稿の保存をどうすればいいのか」「過去作品に脚光を当てたい」といった相談を受けて、現在は業務をイベント運営へ移行。鷲谷氏は「大ベルセルク展」を事例に、コロナ禍により二度の延期に見舞われた展覧会をどう成功させたかを語った。
風間氏は六本木ヒルズ森タワー52階に位置する東京シティビューならではの視点からプレゼン。作品と景色を融合させることを考えた上で展示を行っており、「約束のネバーランド展」では原画ケースの中に作品の象徴的なアイテムを入れるなど、空間演出にもこだわっていることを伝えた。

 

翻訳者の鵜野氏は、コロナ禍においてフランスではマンガの売上が急伸したことをレポート。フランスではロックダウンの影響で『NARUTO-ナルト-』や『ONE PIECE』などの定番作品や長編作品が人気を集めたという。特に若者向け文化活動支援プログラム「カルチャー・パス」で購入された本の約54パーセントはマンガであり、若者の受容に恩恵をもたらした。現在ではフランスで読まれているコミックの2冊に1冊(55パーセント)がマンガで、バンド・デシネやアメコミを大きく引き離している。
具氏は韓国でもマンガは売上の上位にランクインしているが、課題は市場がWebtoonの独占状態にあることだとコメント。Webtoonしか読まない読者は73パーセントに達しているという。ただWebtoonのストーリーやキャラクターはマンガと類似しており、韓国ではマンガのコマや吹き出しを縦読み用に再編集するネーム作家も存在する。実際に『鋼の錬金術師』のようにWebtoon版を制作した事例もあるという。椎名氏はその報告を受け「Webtoonとマンガがまったく異なるメディアとして扱われる日が来るかもしれない」と期待を寄せた。

 

アニメ業界就職事情-若者はいま企業・スタジオに何を求めているのか-

15:00-16:00  配信A会場 
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アニメ業界の就職事情に斬り込んだ本セッション。アニメ業界の志望者は増えているのかという質問に対し、舛本氏はアニメーターをはじめとするクリエイターの応募総数は人口減もあって減っていると明かす。一方でスタジオが受注する作品数は増加傾向にあり、採用人数も増えているため、優秀な学生であれば複数企業に受かることは珍しくはない。ただその際に会社を選ぶ基準は、待遇面であることが多いという。
数土氏が「スタジオのブランドイメージは企業選択に影響しないのか?」と問うと、舛本氏は「スタジオが好きなのはコアファンだけで全体の2パーセント程度」と実感を述べる。中山氏はアニメの視聴者が大幅に増えた一方で、業界志望者はそこまで増えてはいないことがネックで、そういった状況を打破するためにもアニメ業界就職フェア「ワクワーク」を立ち上げたと語った。そのほかにも採用基準やコロナ禍の影響、地方にスタジオが増えている理由など、話題は多岐に及び、業界志望者はもちろん企業側にとっても興味深いセッションとなった。

 

マンガをデータサイエンスで売り伸ばす「出版社/電子書店/ベンダー」の挑戦

16:30-17:30  配信A会場 
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本セッションでは電子書店、出版社、ベンダーそれぞれが、さまざまなデータを事業にどう活用しているのかを取り上げた。DMMブックスの南川氏はユーザー1人あたりの課金額は女性が男性の2倍である一方、女性ユーザーは3割に留まっているというデータから、女性向け作品のポイント還元キャンペーンを展開。またこれまではAmazonに次ぐ総合書店を目標としてきたが、今後は「毎日0円」という新しいシステムの導入を予定しているなど、ユーザーのニーズの変化に対応していくという方針を語る。
コアミックスは電子・紙各書店の販売実績ランキング順位など、多くのデータを可視化して全社員が閲覧可能な状態を実現。花田氏は「勘の要素をできるだけ減らしたい」と語り、データによって根拠を数字で示すことで作家の利益の最大化に繋げているという。野球のデータ分析手法・セイバーメトリクスにも造詣の深い萬田氏は多彩なデータを開陳。特にDMMブックスが2021年4月に行った「初回購入限定最大100冊70%オフクーポンプレゼントキャンペーン」がユーザーに与えたインパクトについて、GoogleやTwitterのデータ分析結果から証明する一幕も見られた。

 

宣氏は韓国でも他の国でもWebtoonのプロモーションはほぼ変わらず、全世界で同じ施策が有効だと語る。そのうえでメディアミックスの重要性を説き、人気コンテンツをWebtoon化するパターン(イン)と、Webtoonを映像化するパターン(アウト)を紹介。特に後者の場合は、配信プラットフォームを通じて世界的な人気を得る可能性も孕んでいるという。
金氏は中国のデジタルコミック市場は2020年で400億円程度で、日本の10分の1程度であることに言及。ユーザーは年間15パーセントずつ伸びており、2023年には5億人を突破する見込みだが、課金による売上で収益を得るよりも話題作りによってIPを育てるという意味合いのほうが強いようだ。
寺谷氏はKADOKAWAのWebtoon=タテスクコミックの事業について、2020年4月に若手社員3人によるイノベーションプランコンテストから始まり事業化に至るまでの経緯を振り返った。飯田氏はWebtoonはすでに単体で売るという次元では動いておらず、IPの価値を最大化するという戦いに移行したと分析。ゆえにすべてのメディアを持っているKADOKAWAに強みがあるのではないかと語った。

 


 

参加者の声
  • 業界構造の変化、今後の多様性を予感させる内容に非常にワクワクしました。
  • 制作現場に近い方々の状況・課題・本音を聞けた。
  • 現在、新作をどんどん配信しているハイクコミックさんの“縦ならではの表現”や根幹はやはり“ストーリーにある”といったお話は、説得力がありました。また、日本のエンタメをもっと世界に広げていくために、新しいことに挑戦していきたいと思いました。
  • それぞれの視点での分析や意見交換をしていて見ていて楽しめました。
  • トリガーのファンでしたので、舛本さんがご出演される機会を初めて拝見し、視聴しました。今年中途採用にはなりますが私も転職活動を行い、様々な業界に応募しましたが、アニメ業界もその際気になっており、今回のセッションは興味があるけれども中々自身が足を踏み込むことはできないアニメ業界の環境・就職事情を聞くことができ、大変勉強になりました。
  • 最前線の方々の話と動向をしっかり見極めつつクリエイティブコンテンツの作り手の活躍、ビジネスをに注目し、IMARTがその発信と成長に繋がることを期待しています。
  • この度は、貴重な機会いただきありがとうございました。講演については興味あるトピックが多く、アーカイブが終わるまでになんとか見れれば…と思っています。(マンガをデータサイエンスで~やマンガアニメの原画展などが気になっています)また、現在コミックを実写にて放映する動きも盛んなので、その辺りのお話も来年聞けましたら嬉しいです。素敵なイベントを企画いただき、ありがとうございました。

 

 

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